Greece Over the Brink : Paul Krugman

クルーグマン教授のギリシャ問題への寄稿
It has been obvious for some time that the creation of the euro was a terrible mistake. Europe never had the preconditions for a successful single currency ....

そもそも(単一通貨)ユーロをつくったのが間違い。フロリダで住宅バブルが崩壊し経済危機が起こった時にワシントンは機動的に高齢者経済を守る手を打った。ユーロにはこれができない。
ヨーロッパでは経済危機が繰り返し繰り返し発生しているが、債務者に緊縮を強要するばかりでありECB(ヨーロッパ中央銀行)は市場のパニックを抑えこむことのみに汲々としている。
しかし、ギリシャの状況はもう後戻りできない状況にまで来てしまった。銀行は時限閉鎖に追い込まれ、政府は財政の舵取りをごく限られた範囲でしかできない。
政府は年金や賃金の支払いを「臨時紙幣」(別通貨)をつくって支払うようなことになりかねないところまで来ている。

今回の国民投票でギリシャ国民は「NO」と投票すべきである、そして政府はユーロから離脱する用意をせよ。
その理由、ギリシャは決して(2000年代の終わりには浪費していたが)言われるような浪費や無責任をやってきてはいないのだ。何度も出費を切り詰め、税金を上げてきた。政府の職員数は25%も減り、年金は大巾カットしてきたのだ。今要求されているような緊縮経済はもう必要ないのだ。(そのまま実施すると今までの負債以上の切り詰めをすることになるほどだから)

もしも、ギリシャが自国通貨をもっていたなら通貨切り下げを大胆に行うことで解決が付く。平価が安くなれば貿易が有利になる(輸出が急増する)。そして経済は復活するのだ。1990年台にカナダで最近はアイスランドで実際に起こったことだ。しかし、ギリシャは自国通貨を持たない。その選択ができないのだ。
では、ユーロから離脱すればいいのか?「Grexit」と呼ぼう。しかし、その手は取ってはならない。今までに十分な緊縮をおこなってきているので、いまやると経済混乱が計り知れない。急進左派連合政府「Syriza」が緊縮を受け入れてきたのもそれを理解しているからだ。
しかし、troika=European Commission (EC), the International Monetary Fund (IMF), and the European Central Bank (ECB) =は緊縮一本槍だ。結果、ギリシャは離脱か残存かの二者択一に追い込まれてしまった。過去五年間の努力の過程や積み上げが無きものになっている。
troikaの要求をTsipras首相が受け入れない理由だ。もしも今回の国民投票で「Yes」となったらtroikaの本音として意図するTsiprasの追落が成功することだろう。
しかし、3つの理由からそれをしてはならない。
1:より厳しい緊縮はギリシャを殺すことにしかならない。5年間の緊縮の継続は悪くなるばかりだったではないか。
2:最悪の事態である「Grexit」が実際に起こることになりかねない。銀行が閉まり、政府は財政コントロールができない事態に今なっている。これ以上のダメージを与えてはならない。
3:troikaの最後通牒を受け入れることはギリシャの「独立」をも否定することを意味してしまうのだ。
troikaを押し付けている実体は単なるテクノクラート(技術官僚)に過ぎない連中だ。実際このテクノクラートたちは我々マクロ経済学者が取るべきと考える政策のすべてについて無視してきた「妄想家」なのだ。彼らはギリシャ経済のトドメを刺そうとしている。

今こそこのようなやり方を転換すべき時なのだ。でなければ、ギリシャは終わりのない経済緊縮に追い込まれ、収束の見えない不況の中にいつづけることになるのだ。

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